介護業界の現状と人材育成の関わり
介護業界は、少子高齢化がますます進み、介護を必要とする人は
増えてきている一方で、肝心の介護従事者がなかなか集まらないそれどころか介護業界から離れていく人が増えてきているという状況です。そんな中、多くの介護事業者様にとっては、人材確保が一番の課題ではないでしょうか?人材を確保するために、処遇や労働環境の改善、人材育成に取り組む必要性を感じてらっしゃる介護事業者様も多いのではないでしょうか。
中でも、人材育成の必要性を強く感じている介護事業者様が多いように感じます。なぜなら、いくら人材が確保できてもご利用者様が満足するサービスを提供できなかったり、最悪の場合、事故や問題などを起こしてしまったらそもそも介護事業所自体の存続が危ぶまれるからです。
さらに、最近の労働者、特に若い世代には「賃金等の処遇」より「自己実現」や「自分が成長すること」に重きを置く傾向が強いため、そのような若い世代に成長の機会を提供することも人材定着の重要なポイントとなるからです。
しかし、多くの介護事業者様で人材育成の必要性を感じていながら、人材育成に取り組めていない現状があります。それは次のような問題があることが多いようです。
(1)新人を育成できる人材がいない
(2)育成担当者自身が忙しく、人材育成の時間を確保できない
(3)外部機関を利用したくでも、資金に余裕がない
上記の①②の場合は、外部機関を利用することになるでしょう。ただ、③の外部機関を利用したくても資金に余裕がない場合はどうすればよいでしょうか?
その場合に、助成金を活用しての人材育成を検討してみてはいかがでしょうか。
助成金とは ”助成金と補助金の違い”
助成金とは、国や地方公共団体から支給され、原則として返済する
義務のないお金をいいます。
資金調達方法として、助成金と補助金が有名ですが、この2つの違いをご存じでしょうか?助成金と補助金を混同されないよう、説明させていただきます。まず、助成金と補助金は異なるものですが、共通点もあります。共通する点は、これら両方とも、国や地方公共団体から支給され、原則的に返済不要の支援金となります。また、後払いである点も共通しています。
次に、助成金と補助金の違いについて説明します。
まず助成金は厚生労働省所管で、補助金は経済産業省所管であるものが有名です。
助成金、補助金は数多くのものが存在しますが、以下助成金とは厚生労働省所管のもの、補助金とは経済産業省所管のものを前提にお話しさせていただきます。
そして、助成金は、「労働者に対して」何か良いことをした場合に支給されるものです。つまり、施策の対象が「労働者または労働環境」となります。具体的には、労働条件の向上、労働環境の整備、人材育成などがあげられます。
一方、補助金は「事業に対して」何かを行った場合に交付されるものとなります。つまり、施策の対象が「事業」となります。具体的には、革新的技術開発、産業復興、地域の活性化や環境改善などがあります。また、助成金は通年募集していることが多く、要件を満たせば100%ではありませんが支給される可能性が高いのに対し、補助金は公募期間が1か月程度のものが多く、さらに要件を満たしても、採択予定件数や予算の都合上、審査をクリアした場合に交付されるものとなります。
以上のように、助成金と補助金は似ていますが、異なるものとなります。
助成金と補助金の比較
助成金 | 補助金 | |
どこから支給されるか |
国 | 国 |
支給時期 | 後払い | 後払い |
返済義務 | なし | なし |
受けられる 条件 |
原則的に要件を満たせば受けられる可能性が高い |
要件を満たすことを前提に、審査をクリアする必要あり |
申請・募集 期間 |
通年のものが多い | 年1回で短期間のものが多い |
対象 | 労働者、労働環境 | 事業 |
所管 | 厚生労働省 | 経済産業省 |
助成金の活用
厚生労働省所管の助成金の原資は、皆様が納付している雇用保険料です。
雇用保険とは、事業主様を支援することにより、労働者の能力の開発や向上、その他労働者の福祉の増進を図ることが目的の一つとなります。助成金は、国の政策目標の達成に寄与するような取り組みを行った場合に支給されるものが多いです。今であれば、同一労働同一賃金、働き方改革などのキーワードに関わるものが多くなっています。
そんな中、介護事業では、労働者の人材育成、キャリア形成は重要な政策目標に掲げられていることは明らかです。つまり助成金が支給されるということは、このような政策目標に寄与する取り組みを行った証でもあるのです。そのような意味でも、助成金を上手に活用して、皆様も大切な従業員の方の人材育成に取り組むことを検討してみてはいかがでしょうか。
ただ、助成金は聞いたことはあるけど、どんなものがあるのか、どのように申請するのかわからないという方もいらっしゃるかと思います。
そこで、次回は、助成金の概要と申請のおおまかな流れなどについてお話しようと思います。