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口腔ケアの最新のトレンド

口腔ケアの最新のトレンド

医療法人社団カワサキ 理事長 川崎正仁

前回は訪問診療などの介護現場においての診療の難しさと外来診療との違いを様々な関わりの場面でのお話をいたしました。今回は、訪問や介護現場でのヒントとなる口腔ケアのトレンドお伝えしたいと思います。

1.歯科医師から見た介護職員

『社会的地位は、医療が上で介護が下。』
『医療職は限られた人が出来て、介護職は誰でも出来る。』
『医療は進んでいて、介護は遅れている。』
こんな偏った考え方をしている医療従事者は、この日本にはいないことを信じたいです。

近年では歯科大学の教育カリキュラムも大きく変わってきました。
 第1治療医学:病んでいるところを診断し治す医学
 第2予防医学:病まないようにするために対策する医学
 第3リハビリ医学:リハビリテーションは関わりの医学

このように第1や第2はとても重要な学問ですが、第3の学問のであるリハビリ医学は、ここ数年日本の超高齢社会では特に重要な学問で、医療現場に限らず医療従事者が一番不得意な分野である「治らないもの」が介護現場では多く遭遇いたします。

何故なら医療現場では「患者と医者」の関係であっても、介護現場では「生活者と医者」の関係であり、「生活をどのように支えていくか?」が主体となるからです。しかし、治らないものだからこそ、この第3の「関わりの医学」が必要とされるのです。

我々医療従事者には、まだまだ第3の医学が浸透しきっていないので、介護現場で介護職から実際の関わり方の大変さを目の当りに「見て」「聞いて」「体感する」ことで職域の垣根を越えた連携力や第3の医学を身に付けることが出来るのだと思います。

また、我々医療職で「教育課程に無いことは出来ないのか?」と疑問に思うことがあります。
例えば、「看護系が口を触ること」「歯科系がオムツを触ること」などです。

介護現場で介護職の方々と関わる時間が多くなると、幅広い知識と技術の万能さに驚きを感じます。とかく、歯科医療現場は患者様が口腔に対する主訴を明確にもって来院するため、専門職としての対応でも通用しますが、介護現場では病気を診る前に、先ず人を診る事から始めなくてはならず、より多くの人間力を求められることになります。

つまり、第3の医学を自ら学ぼうとしている歯科医療者は、意識的に介護職から学ぶようにしていますので、介護職の方々は自分たちのフィールドで医療者たちにしっかりと教育を遠慮せずに行っていただきたく、もしくは、教育まで行かなくても率先して報告・連絡・相談を密にしていただきたいと思います。

その際に大切なことは、医療的知識はほとんど要らないということです。特に、普段の利用者様の生活状況や性格、日頃の過ごし方、昔の職業や趣味などがとても参考になるので、是非とも教えていただきたい重要なことです。もちろん、最低限の情報として、例えば「食事の量や質」とか「水分摂取の量」とか「排泄の状態」などは介護業務でも気にしている方が良いかと思いますので日々記録をとっておくと良いでしょう。

2.歯科の専門知識はどこまで知っておくべきか

例えば、義歯(入れ歯)の役割は、単に食事をするための装具と思いがちですが、他にも様々な役割があります。主に、会話時の発音、表情の形成ですが、会話や食事が困難になった方にも義歯の役割として廃用予防・意識状態の覚醒・嚥下訓練用の装置・唾液分泌の促進などに必要とされております。

よって、口から飲食を取らずに胃ロウで栄養摂取をしていて、且つ、歯が全く無い方だとしても、入れ歯を使うことによって自己唾液による誤嚥製肺炎のリスクを減らすことが出来ます。

また、厚労省の通則では、発達遅滞・顎や舌の切除・脳血管疾患などによる後遺症により摂食機能に障害がある方や、医師か歯科医師による内視鏡検査や嚥下造影で機能低下が確認できれば、何らかの対策が必要となりますので、医療保険には摂食嚥下療法や経口摂取回復促進加算というものがあり、様々な道具を使用し舌や頬の運動法を実践していただくことで介護現場でも摂食嚥下機能の回復や誤嚥による肺炎を予防します。

これらは摂食機能障害と最初に診断されてから一定のルールに従い医療専門職が実施できる行為ですが、加齢による筋肉の廃用は誰にでも起きうる事ですので常日頃、飲込みに関する筋力が衰えないようなケアをするために介護現場の職員の方々に、食事の時の姿勢・食介助の方法・食事の形態・口腔清掃の方法・呼吸や発声の体操などをお願いすることもあります。

3.歯科医師によって治療法が異なるケース

実は、歯医者も医者の内科・外科・眼科などように専門分野に分かれております。よって、不得意な分野の治療においては、手こずることや治療を行わないケースも介護現場には多くあると思います。極まれに耳にするのが、介護現場の経験が浅い歯科医療従事者は、第3の医学を気にすることなく目の前の病態だけを治療することで終了してしまうこともあるようです。

また、訪問の対象者ではないのに在宅や施設内で診療をしてしまうケースやかかりつけの歯医者を優先することなく治療を進めてしまうケースも残念ながら耳にします。特に、訪問対象でない方を診療し続けた結果、過去にさかのぼって医療保険部分を返還され多額の請求が来てしまうこともあるのでご注意願います。

いわゆる入所型施設での契約時に、『この施設には担当の歯科医がいるので定期的に検診や治療を受けることが出来ます。』という条件で入所契約をしている方もよく耳にしますが、その方が訪問診療の対象でない場合には、トラブルの元となるので施設管理者の方には契約時に間違った広報をしないようお願いいたします。

医療保険のルールでは、訪問歯科診療の基本的な考え方として、出来る限り自力で外に出て行き社会生活から離脱しないような生活(引きこもり予防)を促しておりますので何方でも訪問対象になるわけではありません。例外として寝たきりではなくても、認知症やや怪我や入院など何かを理由に通院不能の場合には一時的に訪問の対象となります。

4.口腔ケアの最新知識のトレンド

いわゆる口腔ケアとは、清掃・機能・環境の3つを整え見守ることです。
 清掃に関しては、虫歯や歯周病を予防する目的です。
 機能に関しては、噛み砕き、飲込み、発声を維持や向上することが目的です。
 環境に関しては、入れ歯作りや食形態や食事姿勢を整え良好にすることが目的です。

口腔ケアとしてよく知られているのが、歯磨きの習慣やパタカラ発声訓練や舌回し訓練などですが、どれも共通して誤嚥性肺炎の予防に繋がります。高齢になると全身の筋力が弱くなりますので、嚥下に関わる筋肉も弱るため結果として誤嚥のリスクが高くなるわけです。

つまり、歯磨きをすることで誤嚥性肺炎の原因である口腔内の細菌を減らし、呼吸や発声や口腔の運動をすることで飲み込むときの喉の動きを良くして筋力や反射力を維持しているわけです。

最近のトレンドとしての1つ目は、栄養管理です。

いくら口腔ケアをしっかり実施していても、残りの機能維持向上するためには筋力が必要です。朝起きる、着替える、歩く、食事する、トイレに行く、風呂に入る、夜寝る、など日常生活をする全身の筋力を最低限維持するためには栄養管理が不可欠です。栄養不足になると、飲み込むために必要な筋肉も細く力も無くなり誤嚥に繋がります。

2つ目は、呼吸管理です

声を出すためには肺に空気をしっかり吸い込んで、吐き出す時に空気が声門を通過することで音が出ます。日常生活の中で何気なく会話するときには呼吸を意識せずに出来ておりますが、高齢になり人との会話が少なくなると肺活量が減ります。肺活量が減ると痰などを吐き出す咳の力も弱まるため、結果として肺に口腔内の細菌が進入し誤嚥に繋がります。

実際にある話ですが、普段元気で生活されていたご高齢の方が、転倒による大腿骨骨折で入院したことをきっかけに、突然ベッド上の生活になり活動量が減ることで食欲が無くなり食事量が減少し、入院中で会話する機会も減少するために、1週間ほどで低栄養状態に陥り、廃用性の筋萎縮(サルコペニア)になり誤嚥性肺炎で亡くなってしまうといった悲劇もあります。

この様な悲劇を防ぐため、栄養管理と呼吸管理の2つを実施する方法を簡単に言うと、筋肉の基である肉や魚や大豆製品など高タンパクの食事と、肺活量を使うように会話をする機会を増やすことに尽きます。

健康な高齢者2600万人、要介護高齢者600万人と言われておりますが、人間は亡くなる最後の日まで、人と会話し、自力で食事し、トイレで排泄する、という自然な生活をするために出来る限りコミュニティーの場を多く作ることで、超高齢社会で問題視されている孤独死や孤立死などの寂しい人生の最後にはならない様、みんなで地域包括ケアシステムをしっかりと構築していきたいと考えます。

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