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社会権と包括的基本権

社会権と包括的基本権

1 社会権

 フランス革命などの市民革命によって、私たちは自由権を得、産業革命によって豊かな社会を得ました。ただ、その中で、労働者や障害を持った方々といった社会的・経済的に弱い立場に立たせられる人々が生まれました。この人々を守り、本当の意味での人権保障を成し遂げるため、「社会権」が保障されるようになったのです。日本国憲法では、労働者の権利である労働権・労働基本権や教育を受ける権利、そして福祉の源となる生存権などが保障されています。

社会権は、自由権が「国家からの自由」と呼ばれるのに対し、「国家による自由」と呼ばれます。すなわち、社会権は、国家に何かをさせる権利なのです。国家が、福祉について責任を負っているのはそのためなのです。

 この責任を果たすため、国は生活保護法や介護保険法といった様々な法律を作り、福祉サービスを提供します。介護の仕事は、高齢者の「社会権・生存権」を保障するものにほかならないのです。

2 包括的基本権と法の下の平等

(1)幸福追求権(13条)

憲法は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」としています。すなわち、私たちは、誰もが幸福になることができる権利を持っているのです。

(2)新しい人権

 芸能報道などで、「プライバシー」という言葉をよく耳にします。マイナンバー制も始まり、日常生活でも「プライバシー権」が話題となっています。

 では、「プライバシー権」は日本国憲法の中に書かれているでしょうか? 実は、書かれていないのです。しかし、何もかもが人の目に曝されてしまっては、安心して生活できません。

先ほどご紹介しましたように、憲法は、「幸福追求権」という幅の広い人権を保障しています。そこで、プライバシー権も、「新しい人権」の一つとしてここに読み込まれ、保障されることになるのです。

 介護の仕事は、高齢者やその家族の個人的な事情にも触れなければならない仕事です。それゆえ、介護の仕事に従事する者は、高齢者とその家族のプライバシーに配慮しなければならず、人に話すときは、本人の意向を聞くことが大切です。

3 法の下の平等

 これまで見てきましたように、私たちには様々な人権が保障されています。これら私たちに保障されている人権は、他の人と比べても等しく取扱われなければなりません。かつてあったように、肌の色でバスの座席を決めたりしてはならないのです。誰もが、法の下に「平等」なのです。

 ただ、平等といっても、「区別」が許されないわけではありません。体の大きな人も小柄の人も、同じサイズのTシャツを着せられることはないのです。個人の特性が配慮されなければ、逆に不平等となってしまうからです。

 すなわち、不合理な区別である「差別」は許されませんが、合理的区別は許されるのです。高齢者、妊婦や障害者の方に配慮して、優先席を用意するなどは、至極当たり前のことなのです。

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