自由権と参政権
では、どのような人権が保障されているのでしょうか。人権は、その性質から、「自由権」、「社会権」、「参政権」などに分類されます。これから、人権の主だったものを見ていくことにします。
1自由権
「自由権」は、国家からの干渉を受けない権利で、「国家からの自由」とも言われます。
これには、精神的自由や人身の自由などが含まれます。
(1)表現の自由
自由権と言えば、「表現の自由」が有名です。皆さんも耳にしたことがあるでしょう。
表現の自由は、言論、出版、集会など一切の表現をすることのできる自由のことを言います。私たちは、話すことも、歌うことも、絵を描くことも、踊ることも自由にできるのです。
それはなぜか。人は、歌ったりしゃべったりすることが楽しいし嬉しいのです。このことは、人間として大切なことであるからです。
もう一つ。表現の自由は、「民主主義」にとってもなくてはならない人権です。私たちが政治に対して物申すことができなければ、悪政を正すこともできなくなってしまいます。それゆえ、人権として大切に保障されているのです。
このような表現の自由を使い、私たちは自分の思いを他人に伝えることができます。しかし、沢山の人たちに伝えるとなると、私たち個人個人にとって決して容易なことではありません。最近ではブログやSNS、ツイッターなどで情報を発信することができるようになりましたが、一般的にはテレビ局や新聞社のように一斉に全国に発信するようなことはできません。
ゆえに、私たちは、多くの場合情報の受け手となります。このため、表現の受け手の権利、すなわち「知る権利」も表現の自由の一つとして保障されています。
(2)人身の自由
人は、じっとさせられたり、閉じ込められたりすると、辛い嫌な思いをします。理由もなくこのようなことがされないように保障された自由が、「人身の自由」です。不当な逮捕や拘禁は、人の人格、心を傷つけます。
このため、犯罪を疑われる場合であっても、その者に手錠をかけるためには、現行犯でもない限り、裁判所から出される「令状」が必要となります。拘置所などに入れるのならなおさらです。
介護の現場では、拘束具などの使用が問題となります。
確かに、認知症の高齢者が徘徊し事故に巻き込まれたといったニュースを、耳にすることも少なくありません。しかし、本人のためを思ってするにしても、人権保障という目でしっかり見てみる必要があります。本当に必要なのか他に方法はないか、もう一度考えてみてください。
2参政権
私たちは、選挙に行き議員を選びます。場合によっては、自ら議員に立候補することもあるでしょう。このように、国の政治に参加することのできる権利が、参政権です。自由権が「国家からの自由」と表現されるように、参政権は、「国家への自由」と表現されます。
この参政権の行使は、主権者である国民が、その「主権」を行使し国の行く末を最終的に決めることに他なりません。重要な人権です。選挙権や被選挙権がそれです。
選挙権・被選挙権は、かつては判断能力が低下してしまった「成年被後見人」には認めてられていませんでした。しかし、人権としての重要性から法改正がなされ、「成年被後見人」も選挙に行けるようになりました。